USB-C DisplayPort 代替モードとは
USB-C は、USB-IF 標準規格団体による新しい物理形状についての規格で、既存の物理形状とは異なり「電力供給、データ転送、ビデオデータ送信」などの幅広い機能をサポートする非常に多用途なインターフェースです。「USB-C DP 代替モード」はこの多用途性を活用して、もともと備わっている高速データ用ラインを、グラフィックデータ送信用ラインとして代用するものです。全ての USB-C に備わっているわけではなく、オプション機能であることに留意してください。
周辺機器側である多くの USB-C ドッキングステーションやハブがこの DP 代替モード機能をサポートしていますが、この機能を活用するにはホストシステム側が代替モードをサポートしている必要があります。ホストシステムとデバイスの両者がこの機能をサポートしている場合に限り、USB-C ポートは既定値であるデータ転送プロトコルから、グラフィック用の代替プロトコルを使用するように自動的に切り替わります。
システムが DP 代替モード対応かどうかを確認するには
使用中のシステムが代替モードに対応しているかを確認するのに最も簡単な方法は、システムの製造元が提供している技術仕様書やユーザーマニュアルを確認することです。しかし残念ながらこの規制には一貫性がなく、わかりやすいとは言えません。以下に、代表的な PC メーカーがユーザーマニュアル内などで USB-C ポートについてどのように記載しているかを示します。
注)DP 代替モードでは、グラフィックデータとして DisplayPort 信号を使用します。もし USB-C ポートの欄に DP 1.2、1.4、2.1 などの記載があれば、そのポートは代替モードに対応しています。
Lenovo
HP
Dell
一部の PC メーカーの製品では、代替モードに対応している USB-C ポートの隣に、物理的に DP 記号を印字することがあります。ただし、この記号がないからと言って代替モード非対応とは言えないため、確実なことはユーザーマニュアルで調べるか、PC メーカーに確認する必要があります。
Thunderbolt 4 や USB4 のグラフィック機能との違い
USB 3.x までの通信プロトコルは、グラフィックデータの送信には上記で説明した「USB-C ポートでの代替モード」機能を利用します。(USB-C ポート以前の USB Type-A ポート自身にはグラフィック送信機能はありません。)
しかし、USB-C ポートを使用した最新通信プロトコル、USB4 や Thunderbolt 4 プロトコルでは、主に「ビデオ・トンネリング」を使用して、グラフィックデータの送信を行います。「ビデオ・トンネリング」機能は、グラフィック用データと通常データ通信に対し動的に帯域幅を割り当て、最適なパフォーマンスを提供できます。もしもデバイス側がこの USB4 や Thunderbolt 4 プロトコルに非対応の場合は、システム側は「USB-C DisplayPort 代替モード」に自動的にフォールバックし、通常の DP 代替モードでのグラフィック送信を行います。つまり、USB4 や Thunderbolt 4 対応の USB-C ポートであれば、必ず DP 代替モードにも対応しているということになります。
USB-C DP 代替モードのメリット
USB-C 代替モードは、ノート PC に搭載された内蔵 GPU の能力を直接使用します。これにより、余分なソフトウェアやデバイス・ドライバを必要とせず、ネイティブレベルの表示パフォーマンスが保証されることになります。その結果、USB-C 代替モードで接続されたモニタでは、USB グラフィック機能などを使った方法と比べて応答時間が短く、シャープかつ詳細なビジュアルを最適なリフレッシュレートで表示する必要のあるアプリケーション(3D ゲームや動画再生など)を利用するユーザーに最適です。また、従来の HDMI や DisplayPort のようなインターフェースがグラフィックデータだけを送信するのとは異なり、USB-C による接続は 1 本のケーブルでグラフィック、データ、電源の伝送が可能なため、より柔軟に外部機器を接続できます。
DP 代替モードのトラブルシューティング
USB-C グラフィック・ケーブル、変換アダプタ、ドッキングステーション、またはハブを使用する際には、ノートパソコンに搭載された USB-C ポートが DP 代替モードをサポートしている必要があります。
これらのケーブルや機器に表示ができないなどの問題が発生した場合は、以下の手順を試してトラブルシューティングを行い、正常に動作しない理由を特定するのに役立ててください。
- 第一に、使用している PC の USB-C ポートが DP 代替モード、または USB4 / Thunderbolt 4 に対応していることを確認します。代替モードはオプション機能のため、USB-C ポートのすべてがこれをサポートしているわけではありません。
- もし ノート PC の USB-C ポートが DP 代替モード非対応の場合は、ハードウェア的制限のために USB-C ドッキングステーションやハブは機能しませんし、これに対処する方法はありません。しかし、どうしても外部モニタを追加接続したい場合には、DisplayLink や Silicon Motion のような「USB graphic変換技術」を使うことができます。
- システムを再起動し、もしドッキングステーションやハブがセルフパワーの場合には、それらを一度パワーリセットしてください。(デバイスを電源やシステムから取り外し、5分ほど放置してから再接続する。)
- ドッキングステーションを使用している場合は、製品に同梱されてきた USB-C ケーブルを使用していることを確認します。
- 全ての USB-C ケーブルが同じ機能を持っているとは限らず、充電用のケーブルでは DP 代替モードに非対応のものが販売されています。ケーブルが代替モード対応であることを確認してください。デバイスに付属してくるケーブルであれば、対応していることが確実と言えます。
- USB Type-A ポートやコネクタには、グラフィックデータを送信する機能はありません。USB-C と USB Type-A のコネクタがついているケーブルは使用できません。(このようなケーブルの多くが充電専用です。)
- ノート PC の OS 上で、ディスプレイ設定が正しいかを確認してください。物理的に接続されている外部モニタが OS 側で無効に設定されていたり、OS が認識できない画面解像度、リフレッシュレートになっていることがあります。
- もし USB-C ドッキングステーションや USB-C ハブに DP 代替モードに関するファームウェア更新がある場合は、それを適用してください。(このような情報は、デバイス・メーカーに確認することができます。)
- ノート PC の OS に最新のシステム・アップデートが適用され、システム・ファームウェアや BIOS、関連デバイス・ドライバが最新状態になっていることを確認してください。特に重要なのは USB ホスト・コントローラと、GPU 用デバイス・ドライバが最新である点です。ドライバが古いと、外部モニタの表示に問題が生じることがあります。このような情報は通常 PC メーカーから入手できます。
- ノート PC の BIOS や UEFI 設定を確認してください。一部の PC メーカーは、USB-C ポートの機能用の設定値を追加していることがあります。DP 代替モード用に、それらが正しく設定されていることを確認してください。
- もしも使用しているノート PC に他の DP 代替モード対応ポートがある場合は、そちらで問題が再現するかを確認します。これにより、特定の USB-C だけの問題なのかを切り分けられます。
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